導関数の関係式からもとの関数を求めよう【神戸大】

次数の扱いが、テキストの解説を読んでもよく分かりませんでした…。

テキストによっては省略されているかもしれませんね。
詳しく見ていきましょう。

問題

$f(x)$は$0$でない$x$の整式で、次の等式を満たしているものとする。

$$\begin{cases}
xf^{\prime\prime}(x)+(1-x)f^{\prime}(x)+3f(x)=0\\[5pt]
f(0)=1
\end{cases}$$

(1) $f(x)$の次数を求めよ。

(2) $f(x)$を求めよ。

(神戸大)

解説

基本的な方針は、$f(x)$の次数を文字で置いてから、恒等式の性質を用いて係数比較によって候補を絞っていく、というものです。

実際に文字で置いたうえでの具体的な計算過程を示していないテキストもあるようなので、その点を掘り下げていきます。

次数を求める

まずは簡単に除外できる候補を潰しておきましょう。

$f(x)$を定数関数と仮定するといかがでしょうか。
第2与式$f(0)=1$より、$$f(x)=1$$と求まりますが、これは第1与式を満たしません。
なぜならば、$f^{\prime}(x)=0,\ f^{\prime\prime}(x)=0$より、$$xf^{\prime\prime}(x)+(1-x)f^{\prime}(x)+3f(x)=3\neq0$$となるからです。

したがって、$f(x)$の次数を$n$とすると、$$n≧1$$と分かります。


さて、そのうえで$f(x)$の最高次数の項を$ax^n$($a\neq0$)と置きます。
すると$f(x)$は、次数が$n$より小さい関数$g(x)$を用いて、$$f(x)=ax^n+g(x)$$と表せます。

これを用いて第1与式を整理していきます。

$$\begin{align}
(左辺)=&xf^{\prime\prime}(x)+(1-x)f^{\prime}(x)+3f(x)\\[5pt]
=&x(ax^n+g(x))^{\prime\prime}+(1-x)(ax^n+g(x))^{\prime}+3(ax^n+g(x))\\[5pt]
=&x\cdot n(n-1)ax^{n-2}+(1-x)nax^{n-1}+3ax^n+3g(x)+(1-x)g^{\prime}(x)+xg^{\prime\prime}(x)\\[5pt]
=&(-n+3)ax^n+n^2ax^{n-1}+3g(x)-xg^{\prime}(x)+g^{\prime}(x)+xg^{\prime\prime}(x)
\end{align}$$

各項の次数を確認してみましょう。

$(-n+3)ax^n$$n$次
$n^2ax^{n-1}$$n-1$次
$3g(x)$$n-1$次以下
$xg^{\prime}(x)$$n-1$次以下
$g^{\prime}(x)$$n-2$次以下
$xg^{\prime\prime}(x)$$n-2$次以下

これが右辺の$0$と等しいという等式が、$x$についての恒等式であるとして係数比較を行います。

恒等式の係数比較といえば、すべての次数について行うのが一般的です。
しかし今回は明確に次数が確定している項は$n$次の項しかありません。
($n-1$次の項は$g(x)$が含まれるかもしれないし含まれないかもしれないので未確定)

$n$次の項について係数比較を行うと、

$$(-n+3)a=0\\\Leftrightarrow n=3$$

これは先に求めた$n≧1$を満たします。

(1)答
$$3$$

もとの関数を求める

ここからはひたすら代入祭りです。

(1)で$f(x)$は3次関数であると分かったので、実数$a,\ b,\ c,\ d$($a\neq0$)を用いて、$$f(x)=ax^3+bx^2+cx+d$$と置けます。
ここで第2与式$f(0)=1$より、$d=1$とただちに求まるので、$$f(x)=ax^3+bx^2+cx+1$$としましょう。

このとき、一次導関数と二次導関数は次のようになります。

$$\begin{align}
f^{\prime}(x)&=3ax^2+2bx+c\\
f^{\prime\prime}(x)&=6ax+2b
\end{align}$$

これを第1与式に代入すると、

$$\begin{align}
(左辺)=&xf^{\prime\prime}(x)+(1-x)f^{\prime}(x)+3f(x)\\[5pt]
=&x(6ax+2b)+(1-x)(3ax^2+2bx+c)+3(ax^3+bx^2+cx+1)\\[5pt]
=&(9a+b)x^2+(4b+2c)x+c+3
\end{align}$$

再び、これが右辺の$0$と等しいという等式が、$x$についての恒等式であるとして係数比較を行います。今度はすべての次数の項について比較します。

$$\begin{cases}
9a+b=0\\
4b+2c=0\\
c+3=0
\end{cases}$$

これを解くと、$a=-\frac{1}{6},\ b=\frac{3}{2},\ c=-3$。

(2)答
$$f(x)=-\frac{1}{6}x^3+\frac{3}{2}x^2-3x+1$$

まとめ

微分の知識だけでは難しいですね。

導関数の関係式から次数を導いたりもとの関数を求めたりするには、考えやすくなるように上手い具合に次数や最高次の項を文字で置いて恒等式の性質を利用したアプローチが有効でした。

学校で恒等式を習う際には軽く流しがちですが、こういうときに活躍するんですね!
練習を重ねて自力で思いつけるようにしておきましょう。

それでは。