【解説】三角錐に内接する球の半径を求めよう

三角錐に内接する球の半径の求め方が分かりません…。

簡単に求められる公式もありますが、
まずは一般的な考え方をマスターしましょう!

問題

$\rm{AB=AC=AD}=6$、$\rm{BC=CD=DB}=6\sqrt{2}$である三角錐$\rm{ABCD}$に内接する球の半径を求めよ。

解説

「三角形に内接する円の半径を求める方法」を思い出しましょう。
以下のような関係性を使って考えるはずです。

$$(三角形の面積)=\{(内接円の半径)\times(三角形の辺の長さ)\times\frac{1}{2}\}の和$$

右辺は、「もとの三角形」を「もとの三角形の辺を底辺とし内接円の中心を頂点とした三角形」に分解していることになります。

これを三次元に拡張すると次のようになります。

$$(三角錐の体積)=\{(内接球の半径)\times(三角錐の面の面積)\times\frac{1}{3}\}の和$$

右辺は、「もとの三角錐」を「もとの三角錐の各面を底面とし内接球の中心を頂点とした三角錐」に分解していることになります。

これを用いて考えていくので、求めるべきは三角錐の体積と表面積になります。

三角錐の体積

今回の三角錐の各辺の長さをよく見てみると、

$$\rm{AB:AC:BC=AC:AD:CD=AD:AB:DB=1:1:\sqrt{2}}$$

となっており、$\rm{△ABC}$、$\rm{△ACD}$、$\rm{△ADB}$はいずれも二等辺直角三角形であることが分かります。

したがって、$\rm{△ABC}$を底面と考えると、三角錐の体積$V$は、

$$\begin{align}
V&=\rm{△ABC} \times \rm{AD} \times \frac{1}{3}\\
&=(6 \times 6 \times \frac{1}{2}) \times 6 \times \frac{1}{3}\\
&=36
\end{align}$$

三角錐の表面積

上記の計算の中で$\rm{△ABC}$の面積が求まっています。
$\rm{△ACD}$、$\rm{△ADB}$も同様の面積です。

$$\rm{△ABC=△ACD=△ADB=18}$$

残るは$\rm{△BCD}$ですが、これは正三角形なので「三角形の面積の公式」から直ちに求まります。

$$\begin{align}
\rm{△BCD}&=\rm{BC} \times \rm{BD} \times \sin{60^\circ} \times \frac{1}{2}\\
&=6\sqrt{2} \times 6\sqrt{2} \times \frac{\sqrt{3}}{2} \times \frac{1}{2}\\
&=18\sqrt{3}
\end{align}$$

内接球の半径

では冒頭の考え方を使って、内接球の半径を求めてみましょう。

内接球の中心を点$\rm{I}$、半径を$r$とすると、

$$\begin{align}
V=&\rm{三角錐IABC+三角錐IACD+三角錐IADB+三角錐IBCD}\\
=&\rm{(△ABC\times r \times \frac{1}{3}) + (△ACD\times r \times \frac{1}{3}) + (△ADB\times r \times \frac{1}{3}) + (△BCD\times r \times \frac{1}{3})}\\
=&\rm{(△ABC + △ACD + △ADB + △BCD)\times r \times \frac{1}{3}}\\
=&(18 + 18 + 18 + 18\sqrt{3})\times r \times \frac{1}{3}\\
=&(18 + 6\sqrt{3})r
\end{align}$$

これが$V=36$と等しいので、

$$(18 + 6\sqrt{3})r=36\\
\Leftrightarrow r=\frac{36}{18 + 6\sqrt{3}}=3-\sqrt{3}$$

$$r=3-\sqrt{3}$$

まとめ

平面の考え方が空間に拡張できることは、よくあります。

三角錐の内接球を求めるには、三角錐の体積と表面積から方程式を立てるのが有効ということでした。

実はこの考え方は三角錐によらず、あらゆる多面体に対して使うことができます。
これを一般的な公式として表したのが次の式です。

多面体の内接球の公式

$$V=\frac{1}{3}rS$$

  • $V$:多面体の体積
  • $S$:多面体の表面積
  • $r$:内接球の半径

ただし公式を丸暗記するのではなく、もとの立体を錐に切り分けているという考え方を押さえておくようにしましょう。
その方が応用を利かせられます。

それでは。